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のうがく図鑑



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バックナンバー(第6巻)

    Let’s Enjoy細菌学!







    井口 純 (農学部・畜産草地科学科 准教授)


     研究者という職業を意識したのは大学3年生の時でした。当時、福井県沖で石油タンカーが座礁した際に、「海洋に流出した石油を浄化するために石油分解細菌を利用する」というニュースを見て、細菌が持つ特殊な能力に驚き、その後、病気を引き起こす細菌、工業利用される細菌、人の健康を支える細菌など、さまざまな細菌が人の生活に密接に関わっていることを知りました。それと同時に、自らも細菌に注目した研究や開発に携わりたいと思うようになり、大学院への進学を決めました。その後、農学部、医学部、国の研究機関などでの研究を経て、現在の職業に至っています。

     農学部には細菌を研究している研究室がたくさんあります。海洋生物環境科学科には「魚に病気を引き起こす細菌」、獣医学科には「家畜に病気を引き起こす細菌」を研究している先生がいます。悪さをする細菌だけではなく、応用生物科学科には細菌の発電能力に着目した「微生物燃料電池」、畜産草地科学科には「植物の生育を助ける土壌細菌」など有用細菌の研究をしている先生もいます。農学という領域の中で「細菌」は良くも悪くも注目されている存在なのです。細菌は肉眼では見えない小さな存在ですが、とても大きな可能性を秘めており、その能力の理解や制御は、我々の豊かで安心な生活に繋がるものだと思っています。

    sensyoku
    糞便をスライドグラスに拡げて観察すると、色々な
    形をした細菌を観察することができます(生後2ヶ月
    の息子の糞便を検体として用い、グラム染色したもの)。

     私の研究室はと言うと、「ヒトに食中毒を引き起こす細菌」の一つである病原性大腸菌の研究を行っています。その中にはO157という呼び名で知られている腸管出血性大腸菌や、世界規模で乳幼児下痢症の原因となっている腸管毒素原性大腸菌などいくつかのタイプが含まれています。現在取り組んでいる研究テーマの一つは、「どのような家畜や野生動物がどのようなタイプの病原性大腸菌を保菌しているのかを明らかにする」ことです。日本各地の畜産関係者や猟師の方々に協力していただきながら糞便を研究室に送っていただき、そこから病原性大腸菌の分離を試みています。根本的な汚染源が明らかになれば、具体的な感染症対策に役立てることができます。研究を進める上での特徴として、ゲノム解析という手法を積極的に使っています。ゲノム解析とは遺伝情報であるDNAの塩基配列を決定して比較する手法のことで、菌の持つ能力(病原性)の推測や細分類、感染経路・汚染源の解明に利用できるのではないかと試行錯誤しているところです。

    皆さんも農学部で細菌学を学んでみませんか?


    bunri DNA
    家畜糞便や環境水からの細菌の分離には写真のようなさまざまな種類の寒天平板培地を用います 液体中のモヤモヤした糸くずは、大腸菌から抽出したDNAのかたまりです。これを用いて塩基配列の決定を行います。




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