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バックナンバー(第10巻)

    畜産物の魅力







    仲西 友紀(農学部・応用生物科学科・准教授)



     私の専門は「畜産食品科学」です。研究者である前に、畜産物を食べるのが大好き。大学は、とにもかくにも忙しい環境ですが(まえがき参照?)、大好きな畜産物に関する仕事ができることに、日々幸せを感じています。私の研究の目標は、畜産物の付加価値向上です。今回は、畜産物の魅力について紹介したいと思います。


     畜産物に限らず、食品の機能性は3つに大別することが出来ます。1つ目が栄養性です。人間も含めて動物は食事をしないと生きていけません。生きるために必要な栄養素の供給源になること、それが食品の1次機能です。1950年の日本人の平均寿命は60歳前後でしたが、現在は男女ともに80歳を超えています。この期間に日本人の体格は著しく向上しましたし、今や日本は世界有数の長寿大国です。長寿となった理由には、医療技術の進歩や公衆衛生環境の整備など、様々な要因があげられますが、栄養環境の改善も理由の一つです。特に畜産物を多く摂取するようになったことが長寿に貢献したと考えられており、実際、この期間に日本人の畜産物摂取量は10倍に増えています。食肉、牛乳、卵などの畜産物は良質なタンパク質源であり、その他にも脂質、ビタミン、ミネラルを豊富に含んでいます。畜産物は一次機能に長けた食品です。
     食品の機能性の2つ目は、嗜好性や食感。いわゆる、「おいしさ」です。「おいしさ」は味、香り、色、歯ごたえなど、様々の要素が絡み合って構成されますので、食品の「おいしさ」を科学的に説明することは簡単ではありません。しかし、畜産物が「おいしい」ことは、皆さんよくご存じですよね?食肉や乳、卵はそのまま調理に用いることはもちろん、ハム、ソーセージ、チーズ、ヨーグルト、マヨネーズなどの加工食品の原料にもなります(写真1および2)。畜産物の2次機能に関して、私は、食肉の“柔らかさ”に関心を持って研究を行っています。家畜の筋肉も人間の筋肉と同様に、死後硬直を起こすため、死後間もなく筋肉は硬い状態に陥ります。一方、死後硬直を起こした筋肉を低温化で一定期間貯蔵しておくと、自然と“柔らかさ”を取り戻し、食用に適した状態になります。このことを熟成と呼びますが、熟成の詳細なメカニズムは、まだ分かっていません。熟成のメカニズムを解明し、効率的な食肉生産技術を開発することが、私の研究のゴールです。

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    写真1
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    写真2

     食品の3つ目の機能は生体調節作用です。具体的には、病気の予防や改善に役立つ機能のことです。私は上記の2次機能に加え、3次機能に着目した研究も行っており、特に注目しているのが牛乳や牛肉です。ウシは胃が4つもあり、1つ目の胃には多種多様な微生物が生息しています。これらの微生物が作る物質の中には、ヒトの健康に有用なものがあり、私たちは牛乳や牛肉からそういった有用物質を摂取することができます。その一例がフィタン酸という脂肪酸で、私たちは「T細胞からの免疫分子の過剰産生をフィタン酸が抑制する」ことを近年明らかにしました(Journal of Functional Foods, 21, 283-289, 2016)。フィタン酸には免疫を整えてくれる作用がこれ以外にもありそうで、現在更なる研究を実施しているところです(写真3)。

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    写真3

     このように畜産物はヒトにとって有用な機能を有しており、私たちの生活に欠かせない食品の一つです。一方、畜産物の過剰摂取がコレステロール値の上昇などの問題を引き起こすことも事実。私がお伝えしたかったことは、決して畜産物に偏った食生活を推奨することではありません。野菜や穀類など、他の食品もバランス良く摂取してこそ、畜産物の機能性が発揮されるのです。




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