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のうがく図鑑



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バックナンバー(第11巻)

    マルチプレーヤー「微生物」の有効利用







    田岡 洋介(農学部・海洋生物環境学科・准教授)



     皆さん微生物と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?食中毒を引き起こす病原性大腸菌O157のような悪しき病原菌をイメージされるかもしれません。もしくは、納豆やヨーグルトといった、美味しい発酵食品を想像されるかもしれませんね。そう、どちらも間違いではありません。微生物は良くも悪くも我々の生活の中に常に存在する地球上の共存者であり、後者のように場合によってはより良い生活を送るための良きパートナーです。パートナーというと、私たちの消化管には、多様で無数の微生物が存在します、いわゆる腸内細菌というものですが、これらをかき集めると、重量にして数kgに達すると言われています。微生物は目に見えませんが、身近な存在です。私たちの体の中で共生しているわけですから。
     最近の微生物研究のホットな話題としては、酵母のオートファジーを明らかにし、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅栄誉教授先生や、昨年度、微生物が産生する抗寄生虫薬を用いた感染症予防法の開発により大村智博士も同賞を受賞されたことは記憶に新しいと思います。このように微生物は「下等」と言われながら、その能力は人間を凌駕することはまれではありません。私の研究ではそのような“マルチプレーヤー”としての微生物の能力を見出し、引き出しながら、その個性を産業利用するための研究に取り組んでいます。



    研究例1:”プロバイオティクス”を用いた健康な養殖魚造り

     養殖場では様々な病気が発生することがあり、その抑制には人間と同じように抗生物質などの薬剤が用いられています。しかしながら、薬剤が効かなくなる抗生物質耐性菌の出現や魚体内への薬剤残留の問題が指摘されています。これを解決するために乳酸菌などの有用細菌を飼料添加し、養殖魚の免疫機能を高めることで、病気を抑制する手法が注目を集めています。このように宿主生物の健康増進に寄与する生きた微生物を”Probiotics(プロバイオティクス)”と呼びます。例えば、カンパチにプロバイオティクスを投与すると、投与しない区(図1上)に比べ、投与した区(図1下)は体色が鮮やかで活き活きとしています。血清中のリゾチーム活性など免疫指標を測定すると、プロバイオティクス投与により、その活性が向上していることが確認されました。一方、プロバイオティクスは病原菌に直接作用し、その増殖を抑えることが知られています。寒天培地上に病原菌であるビブリオ菌を培養し、その上にPU-T8と呼ばれるプロバイオティクス菌を摂取したところ、PU-T8が増殖した周辺は透明になっています(図2)。これは病原菌の増殖がPU-T8により阻害されていることを示しています。薬剤を用いない21世紀型養殖法、プロバイオティクスの研究をしてみませんか?


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    図1
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    図2


    研究例2:未利用水産資源を用いた魚醤油の生産

     宮崎県北部の五ヶ瀬町ではヤマメの養殖が盛んです。海洋生物環境学科の内田勝久准教授の研究により、水温の下がる冬季にヤマメを海上養殖することで巨大化する技術が開発されました。この巨大化した個体は「みやざきサクラマス」と呼ばれ、宮崎の新規水産ブランドとして期待されています(図3)。個体の巨大化とともに問題となるのは、可食部や卵以外の加工残渣であり、本研究ではこの加工残渣を有効利用するため、魚醤油を開発する研究を行っています。まず、魚自身が持つたんぱく質分解酵素を用いて自己消化させ、うまみ成分であるアミノ酸を濃縮させます。更に乳酸菌を用いた二次発酵を行うことで、嗜好性が高く、機能性をも付加した魚醤油づくりを目指しています(図4)。本研究成果により、みやざきサクラマスを素材とした特徴的な魚醤油が開発出来たため、特許出願(特願2016-112025)を行いました。皆さんも、「もったいない精神」で、水産物を余すことなく利用する研究開発に取り組んでみてはいかがでしょう?

    詳しくは学科HPもご参考ください。
    http://www.agr.miyazaki-u.ac.jp/~fishery/staff/staff12/


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    図3
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    図4



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