ホーム > のうがく図鑑 : 第20巻「たかが“雑草”,されど“雑草” 」

のうがく図鑑



のうがく図鑑


バックナンバー(第20巻)

    たかが“雑草”,されど“雑草”







    松尾 光弘 (農学部・フィールド科学教育研究センター(木花)・講師)



     皆さんは,日常生活の中で“雑草”とどのような関わり合いがありますか?私の講義でも学生達に同じ質問をしています。おそらく「家の庭の草取りが面倒」とか「実家の畑や田んぼにたくさん生えて困る」など,“雑草”に対する印象は良くない回答ばかりかと思います。私の研究テーマの一つは,そのような負のイメージの“雑草”をどのように効率的に防除するかです。

     農作物に害を及ぼす雑草は日本中にたくさん存在しますが,最近では海外から侵入してきた雑草が日本全国各地で大問題となっており,その原因が私たち日本人の食生活の変化に大きく関係しています。九州でも,これまでに見られなかった雑草が農耕地に侵入して,種によっては著しい繁殖力を持つことから分布域を拡大しているものもあります。外来の雑草については,基本的な生態情報がないために,日本国内に侵入して問題となった場合にどのように防除すればよいのか,その方法が不明です。そこで,それぞれの雑草の生態を解明しながら,どのように効率的に防除するか,その技術を開発する研究を行っています。現在主に取り組んでいるのが,ツユクサ類雑草です。ツユクサと聞くと,皆さんに馴染み深い『ツユクサ』を思い浮かべるかと思いますが,最近九州の農耕地に増えているのは『マルバツユクサ』と『カロライナツユクサ』です(図1)。


    1
    図1 九州の農耕地に見られるツユクサ類
    (左:ツユクサ,中央:カロライナツユクサ,右:マルバツユクサ)


     『マルバツユクサ』は有明海沿岸地域の果樹園を中心に広く発生しており,2mにも伸長する茎が果樹の幹や枝に絡みついたり,よじ登ったりする問題が生じています(図2)。『マルバツユクサ』には,(1)1つの果実の中に大きさの異なる2種類の種子を形成する(図3),(2)土の中にも花(閉鎖花)を形成して大きさの異なる2種類の種子を生産する(図4),このような2つの生態的特徴があり,1つの植物体から形成される種子は約2万粒とも考えられています。『カロライナツユクサ』は北部九州の畑作ほ場を中心に多発生が見られるようになり,特に大分県ではダイズ栽培ほ場に多発生するとダイズの収穫が皆無となる問題が生じています(図5)。これまでの研究によって,これら2つのツユクサ類雑草の生態や有効な防除方法が明らかとなってきました。


    2 3
    図2 果樹の根元に発生するマルバツユクサ
        
    図3 マルバツユクサの1果実にできる2種類の種子
    (左:小種子,右:大種子)

    4 5
    図4 マルバツユクサの地下部に見られる花(閉鎖花) 図5 ダイズ圃場に多発生するカロライナツユクサ


     九州の国立大学農学部で農業分野の雑草を研究しているのは当学部のみであるので,ツユクサ類だけでなく,九州各地の農業現場で問題となっている雑草の情報も多く集まります。農家さんの除草に対する苦労を少しでも軽減するためには,雑草の生態を明らかにした上で防除技術の開発を進めなければなりません。これからも“雑草”にしっかりと向き合いながら,宮崎から九州,日本あるいは世界に向けて発信できる研究を進めてゆきたいと考えています。



     
    このページの先頭へ